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「この問題が解けるか?」 「どんな?」 「問題」 「ドンと来い」 「俺は悪魔に捕まった。悪魔はこう言った『俺が今考えていることを当てられたら逃がしてやろう』。俺はなんといえば逃げることができるだろうか」 「簡単だ。『悪魔は俺を逃がさないと思っている』。すれば悪魔は『はずれ』と言い、 俺を逃がそうとしていることになる」 「残念。クイズにはずれた。逃げられない」 「そうか。じゃあどうすりゃいいんだ?」 「逃げられないんだよ」 「じゃあひっかけか?」 「問題」 「ドンと来い」 「1枚の当たり券を含む100枚のくじを100人に1枚ずつ配ったとする。もちろん、誰か一人に必ず当たる。このとき、一人の人にとっては、当たる確率は1%である」 「ふむふむ」 「1%の確率で当たるくじをもらった人が100人いるとする。このとき、一人の人にとっては、はずれる確率は99%である。確率の定理によれば、はずれることが100人に共に起こる確率は99%の100乗となる。すなわち、約37%の確率で100人全員がはずれる」 「ふーん」 「どっちが正しい?」 「100人みんなはずれるわけないだろう。後者は不正解だ」 「残念。ふたつとも正解だ」 「またひっかけか?」 「パラドックスだ」 「パラドックス?」 「問題」 「ドンと来い」 「『絶対に誰にも解けないクイズ』ってなに?」 「絶対解けない??う~ん。むずかしいなぁ。もうそのクイズ自体誰にも解けないな」 「正解」 「えっ!?やったやった!誰にも解けないクイズを解いちゃった!俺は天才だ!」 「うん。でもこの時点で『誰にも解けないクイズ』は『誰でも解けるクイズ』になっちゃったんだよ」 「え?じゃあ俺は天才じゃないの?」 「そうだ。君は凡人だ」 「そんなはず無い!もう一問出してみろ!見事に正解してやる!」 「じゃあ問題」 「ドンと来い」 「YESかNOのみで答えてください。それ以外を言ったら不正解とします」 「YES」 「あなたがこの後発声する言葉は、『NO』である」 「・・・・あっ」 目が覚めると午前4時。僕が自殺した時間だ。 さっき僕の身に起こったこと、身というか霊体なのだが、この世に戻ると信じられなくなった。 夢だったのか。しばらくボーっと、ベッドに腰掛けていた。 そのうちカーテンのスキマから朝陽が射し込み、僕は第2の人生を歩けるのだと理解した。 すこしボーっとしすぎた。僕の人生は今日からだ。 僕は朝の町並みを見たくなった。 これから僕が生きる町並みを。 生きかえったのが楽しくなってきた。 服を着替えて、自殺する予定だったカミソリでヒゲを剃り、 走って階段を下りたら勢いよく家を飛び出した。 その時、 僕の真横から大きな鉄の壁が押し寄せた。 一瞬のこと。 気がつくと、僕は人の多い部屋に、長椅子に腰掛けて、何かを待っていた。 「次の方どうぞー」 やる気の感じられない年寄りの声で僕は席を立った。 席を立ち、周りを見渡してみると、青白い顔がこちらをうらめしそうに見ている。 僕は足早に奥の間へ入った。 部屋の壁は真っ白だ。 どっかで見たことある光景だ。 いや、はっきりと憶えている。僕を呼び込んだのはやはりカトちゃんだ。 どうやら僕は死んで、白い部屋に戻ってきてしまったらしい。 「死んじゃいましたけど」 「それでいいのよ。とりあえず座って」 おかしな会話だ。人一人死んでるのに。 「あの、生き返ったんじゃないんですか?」 「君は死んだんだよ。そんな簡単に生き返らせてたまりますか」 「じゃあどうして一度生き返らせたんですか」 「自殺ってのはさ、罪が重いの。だから君は文句なしで地獄行きになっちゃうの。ウチの管轄は 4年連続で地獄行きワースト1位なの。もうこれ以上地獄へ行かせちゃいかんの」 どうやらこれはあの世の不正みたいだ。 まあ僕が天国に行けるのなら黙っていてやろう。 「君だってね。事故死の運命だったのに、急に自殺なんかしちゃうから焦ったんだよ」 カトちゃんは必死に弁明していたが 僕の耳に右から入って左から抜けていた。 僕は黙って立ち上がり白い部屋を出た。 天国へ上がるエレベーターへ向かった。 死ぬ運命は変えられない。 すべてはあの白い部屋で決められているのだ。 誰もが、あの部屋で最後の審判を受けて。 僕は、天国での生活を考えると笑みがこぼれた。 すれ違う死人は僕の顔を不審そうに見ていた。 「次の方どうぞー」 やる気の感じられない年寄りの声で僕は席を立った。 席を立ち、周りを見渡してみると、青白い顔がこちらをうらめしそうに見ている。 僕は足早に奥の間へ入った。 部屋の壁は真っ白だ。いや、壁かどうかもわからない。 どこまでも続いてるような、僕はその奥を見ようとずっと白を見ていた。 「時間ないんだから、早くここ座って」 年寄りは苛立ちながら僕を座らせた。 白い衣を着た、見た感じ加藤茶に似ている。 カトちゃんの机には、 書類が山積みで、いい加減買い換えろと思えるパソコンが一台、 「死亡者リスト」と書かれたファイルが置いてある。 ここにあるものすべてが新鮮で、よだれをたらしながら、あるものすべてに見入っていた。 「君は、おとといの午前4時、カミソリで手首を切って自殺した」 分厚いメガネをかけて、分厚いファイルを見ながらカトちゃんが発声した。 「はいそうです」 「困るんだよ自殺はさぁ。なんで自殺なんかしたの?」 「・・・・・」 僕は死んだ。 確かに僕は自殺した。おとといの午前4時。カミソリで手首を切った。 でもなぜ自殺なんかしたのか、僕にも理由がよくわからない。 服だってクリーニングに出しっぱなしだ。 ただ、その場の勢いというかなんというか・・・ 「まあいいや。でもさ、君ね、自殺する予定じゃないのよ」 「えっ?」 「自分でもなんで自殺したのかわかってないでしょ。それはリストに載ってないからだよ」 「はあそうですか」 あの世の仕組みなんかよくわからん。 生きることに未練なんかないから早く天国に連れてってくれ。 「とりあえず君、下界に戻すよ」 カトちゃんは「あの世管理人」なのか。 意外とあっさりしていて驚いた。そんな簡単に生き返るもんなのか。 「この部屋出て右行ったとこのエレベーターで下行ってね、ハイ」 「ちょちょちょちょちょっと」 「次の方どうぞー」 開いた口がふさがらない、なんてことあるはずないと思っていたのにまさにこれか。 僕は死んでからこの部屋に入るまで丸一日待った。 なのにこんなにあっさりしていると虚しいだけだ。 もう次の人が入ってきたので白い部屋を出た。 とりあえず僕は言われた通りエレベーターに乗った。 エレベーターの中でいろいろ考えてみた。 生きてたとき、うれしかったこと、悲しかったこと、辛かったこと。 全部ひっくるめて、まあ生きるってことは素晴らしいことだ。 そう自分に言い聞かせて、2度目の人生を生きようと決意した。 そう思ったとき、エレベーターの扉が開いた。 後編へ 「さくらの季節が過ぎたら、お別れね」 たしか金木犀のいい香りがしていたころ 初恋の彼女はそう言った。 中学校の頃だった。 中学校の3年間という期間限定の恋だと思っていた。 でもそれは違ったみたいだ。神様ってのはいやなヤツだ。 突然の通告に僕は立ち尽くし、ただ呆然としていた。 しばらくして、彼女になにをすべきかを考えてみた。 思いを伝えること、ただそれだけ。 さて、 どうやって思いを伝えるのがいいんだろう。 恋愛に疎い僕は、女の子が喜んでくれる告白なんて思いつかない。 ただ、僕のことを忘れられたくなかった。 ずっと彼女の心のどこかにいるような。 手紙を書こう。 「ラブレター」じゃない。あくまで手紙だ。 昔、友達が好きな女の子にラブレターを書いたが、 便せんにおもいきり「ラブレター」と書いて笑われていたのを思い出した。 だからあくまで手紙なんだ。 いざ書いてみるとなかなかうまく書けないもんだ。 ゴミ箱はもう一行しか書いてない紙や、駄文ばかり並べた紙でいっぱいになっている。 こんなものが親に見つかったらたまらない。あとでしっかり処分しなくては。 僕は失敗した手紙を袋に詰め、机の下に隠しておいた。 彼女からお別れ通告を受けて以来、僕は毎日手紙を書き続けたが、 いまだ納得のいくものを書ききれなかった。 こんなことなら国語の授業はしっかり受けていればよかった、と後悔した。 2学期が終わり、雪が降り、クリスマスが来て、新年を迎えて、3学期が始まって、 ほんとにあっという間だ。 彼女とのお別れが迫っていた。 それと同時に僕は手紙のことで焦っていた。 お別れの日の朝、僕はまだ手紙を書いていたが、やはり納得のいくものは書けない。 焦りと苛立ちから僕は机を蹴った。すると机の下から袋が転がってきた。 僕の失敗した手紙がつまった袋だ。 そうだ。 これにしよう。 彼女の家の前に着くと、車の窓からお別れに来た友達に手を振り出発直前のようだった。 僕は彼女に、失敗した手紙が詰まった袋を渡した。 傍から見ればゴミ袋を渡しているんじゃないかと思うが、彼女は笑顔で受け取ってくれた。 この笑顔に惚れてしまったんだな、と改めて思い返すと顔が熱くなった。 手を振り、車が動き出した。 涙は必死でこらえた。こんなとこで泣いたら男として恥ずかしいんだ。 坂を下り、車が消えていく。 僕はずっと手を振った。 その袋には、僕の思いが詰まってるから、 お別れを聞いてから今日まで、毎日の僕が詰まってるから、 忘れないでくれ。 さくらが散るのと一緒に 僕の恋も散っていった。 近くにおもしろい例え話をするやつ(A)がいる A 「一万円貸してくれ」 僕 「そんなに?困るなぁ」 A 「じゃあ7千円でいいや」 僕 「わかった。はい」 こんな具合に僕はまんまと7千円を貸し出した このときの僕は「1万円より7千円のほうが安いから」という心理が働いた だが実際やつが必要だったのは5千円 僕 「おいおい。なんで5千円なのに1万円も欲しかったんだ?」 A 「そりゃお前。最初から5千円くれって言っても7千円はくれないだろう」 僕 「そりゃそうだ」 A 「つまり、待ち合わせで20分遅刻しそうなときは『30分遅れる』って言ったほうが 実際20分遅れたときに『意外と早かったじゃん』ってゆーことだよ」 こいつにはいつもうまい具合に言いくるめられる A 「ちょっと髪をセットしたいからワックス貸してくれ」 僕 「うんいいよ」 A 「ありがと」 その時やつは残り少ないワックスをごっそりと 少ない髪にべっとりつけた 僕 「おいおい。そんなにいっぱいつけるの?」 A 「そりゃお前。ちまちましてたらだめだろ」 僕 「・・・・・」 A 「つまり、ソーラーパワーの電気イスじゃなかなか死ねないんだよ」 別に痛いとこを突いた、というわけではない ただ A の例え方に関心してしまうのだ 周りに敵を作らず得をする人間 今一番大事な人材だ 秋風に導かれるままに この街へ来たのは何年振りだろう この街へ来なければいけない気がした この街へ帰ってこなければいけないような気が 生まれて成人するまでの記憶がない なにか大きい事故があったらしい その記憶すらない 過去の記憶を失ったことで なにもかも失った気がしていた 家から外へ出ない生活が続いていた このまま死ぬんだと 死んでもいいと思っていた 昨日までは 窓を開けると、すっかり冷たくなった秋風に乗り 一枚の枯葉が部屋のなかに入り込んだ その枯葉を外に出そうと窓の外に目をやると、枯葉越しに山の紅葉が目に入った その時、この街のことが頭に浮かんだ 僕はすぐに荷物をまとめ 気がつくと山の中を走るローカル線に乗っていた 電車を降りると人気のない商店街へ出た どの店の前を通っても いまにも倒れそうな年寄りが聞こえないような声で「いらっしゃい」と言う どこへ向かうわけでもない ただ風に乗って歩いているようだった つづく 一軒の古本屋が目に入った 今にも倒れそうな、傾いていると錯覚するほど古びた古本屋 中へ入ると、やっぱりと思わずほっとするほどのおじいさんが店主をしている たくさんの本が積み重ねられ中は薄暗い 本屋なのにこんなに暗くて大丈夫か?と思いつつ、中を見渡していると 突然、店主に話しかけられた 「久しぶりだね。帰ってきたのかい」 驚いた 僕はこのおじいさんを知らない 呆気にとられた僕の顔を見ておじいさんは話した 「まだ小さかったころ、上にある本をとってやったんじゃ。憶えてないかい」 枯葉を拾ったときのように 頭にこの古本屋の情景が浮かんだ まだ小さく、今では簡単に届く本棚もあの頃は2段目がやっとだった 上の本を取ろうと背伸びをしていると店主のおじいさんがやってきた あの頃からもうおじいさんだったのかと思うと妙におかしくなった おじいさんは本を一冊とって僕に手渡す するとおじいさんはもう一冊本を取って、 そこまで思い出しておじいさんが話した 「あの頃は、よく二人で来ていたのう。あの子は今どうしてる?」 そう聞かれたが、 どういう意味なのか あの子とは誰なのかわからなかった 僕は笑顔だけ返して店を出た この街には僕の過去がある なんでもいいから知りたい 秋風が吹くと 僕は再び歩き出した つづく すこし歩いただけでいつのまにか商店街は終わっていた 静けさが周りを包み 僕の足が地面を踏む音と 風で木々が揺れる音が時々聞こえているだけだった しばらくして 木造の建物が見えてきた 今どき懐かしい木造の小学校だ 記憶の中では初めて見るはずだったのに 自分がいた教室を探していた 初めてみる学校のはずが 不思議と自分がいた教室がみつかった それと同時に 小学校のころの情景が浮かんだ 教室のすみで 女の子が泣いている 僕はその子に声をかけることができなかった すごく胸が苦しい 僕は男の子の仲間に連れられて教室を出た 誰だろうあの女の子は 僕はどうしてあんなに切なくなったんだろう 学校にいると そこはどこよりも寒く感じた 一刻も早くここから離れたかった 僕は学校よりももっと奥へ行き 大きな湖を見つけた 湖の畔まで行くと ここでもおじいさんがボートを貸し出していた おじいさんは僕の顔を見ると笑顔で話しかけてきた 「久しぶりだね。もうあの子はいないのかい」 古本屋のおじいさんと同じようなことを言っている やはりどういう意味なのか あの子とは誰なのかわからなかった 「ボート。乗ってくかい」 僕は一人でボートに乗るのは抵抗があったので ここは引き返そうと思っていると 風に背中を押されるような感覚を受けてボートに乗ってしまった しばらく、湖の真ん中辺りまで漕いだら オールを置き 周りを見渡した そこは 美しすぎるほどの紅葉で 秋に包まれているような感覚に陥った その光景はあの時見た 僕がまだ小さいころの光景だ 僕はすべてを思い出した つづく 10年前、小学6年だ あの頃、僕には好きな女の子がいた 初恋だった 僕はあの子といつも一緒だった 学校でも 家でも 休みの日でも 古本屋に行くのも しかし あの子はこの田舎の町を出て都会へ転校してしまうことが決まっていた 最後に見せたい景色がある 10年前の秋、僕はあの子とボートに乗った 周りのすばらしい紅葉の景色にあの子は目を輝かせて喜んでくれた 僕は、あの子が喜んでいる姿をみるのが好きだった その時あの子は言った 「10年後の今日、また2人でこのボートに乗ろう」 嬉しかった 僕はあの子と両想いになれたのだ、と だが僕があの子と仲良くしているのを よく思っていない友達もいた クラスのリーダー的存在で、体格もいい いわゆるガキ大将が 男のくせに女とばかりつるんでいる、という理由で僕をいじめだした だから僕は あの子をいじめだした 苦しかった 切なかった でもそれで僕は男の子の仲間に入ることが出来た 仕方がなかった 謝ることもできずに なにもできないままあの子はこの街を出て行ってしまった 悔やんでいた ずっと泣いていた 自分を守ることだけを考えて あの子を守ることができなかった自分に腹が立った 中学に上がると同時に、親の仕事の都合で僕も街を出た 2度とあの子に会うことができないと思うと あの子に一言「ごめん」と言うことももうできない そう思うと悔やまずにはいられなかった 中学も 高校も ずっとあの子のことを考えていた 僕は最低な男だ あの子に会いたい すべてを思い出した僕は ボートの上で泣いていた 10年前、ボートに乗った日は今日だ 僕はそれを思い出した 今日、彼女に会って謝ろう 彼女は憶えているだろうか 彼女は来てくれるだろうか 僕は涙を拭い、ボートを少し急ぎめで漕いだ もう日が暮れてきている こんな田舎だから一日の電車の本数も少ない 走って駅へ着くと、最後の電車が到着したようだった 悔やむだけの人生はもうやめよう 彼女はきっと憶えてくれている 彼女はきっと来てくれる 最後の電車が出て行く 駅からは誰か一人出てくるのがわかった ここからは 滲んでみえない たとえ10年経っていても 顔を見なくても僕にはわかった気がした きっとそうだ 彼女は来てくれたんだ 僕は彼女に手を振った 秋風に導かれるままに おわり
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